White Crystal

2003年6月5日
 いつもと変わらない朝だった。
 雪は、朝起きると先ず左手の小指にキスをする。いつからか癖になった動作だ。
 朝食のシリアルが少しすすまなかったが、他に変わったこともない。
 薬も、忘れずに飲んだ。

「おはよう。」
 その少年は、家の前に立っていた。
「おはよう・・・?」
 どこかで見覚えのある気がしたが、思い出せない。
 雪は、ちらと時計を見た。
「大丈夫だよ。僕が守るから。」
「・・・え・・・・・・?」

「学校、遅れちゃうよ。」
「あ・・・。」
 バイバイっと、少年は手を振った。雪はちょっと戸惑いながら、学校の方へ歩き出す。「僕の名前はM。覚えておいて。」
 声が聞こえたが、振り返らなかった。

White Crystal -序-

2003年6月4日
 青年は、朝起きると先ず、指輪を外す。
 手首に巻いたチェーンに通し首にかけると、一瞬青年の姿が揺らいだ。瞬く間にその姿は少年へと変わる。
 5年前から続く、同じ朝。
 ありえない1日を過ごした。
 朝寝坊して、バイトに遅刻。しかも昇給テストの日だったから、昇給も見送り。
 お昼休みになって、お弁当を忘れた事に気付いた。ついでにお財布も忘れてた。
 バイトが終わって、店長に呼ばれて説教。これは予想済みだったけど。

 そして・・・・・・。

 遅刻して行った待ち合わせ場所に、それからさらに1時間してから彼氏が来た。その場で5分の別れ話。・・・・・・ありえん。

 私はため息をついて、そのまま深呼吸して、決めた。
(今夜はパスタにしよう。)

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